光に向かって歩くフィンセント・ファン・ゴッホ― 神戸市立博物館「大ゴッホ展」

ミュージアム

こんにちは〜!こんばんは〜!まるっピです!

ついに行ってきました、「大ゴッホ展」。

2025年9月から始まった大規模な企画展で、阪神・淡路大震災から30年という節目に「希望と再生」をテーマにした展示です。

会期:2025.09.20(土)〜 2026.02.01(日)
会場:神戸市博物館(福島・東京に巡回予定)

オランダのクレラー=ミュラー美術館から約60点のゴッホ作品が来日し、さらにモネやルノワールなど同時代の印象派も並ぶ、かなり贅沢な内容でした。

今回は、私が実際に見た作品の印象と、章ごとの見どころを、感じたままにまとめていきます。


1章:暗い画面の中に宿る “小さな光”

入口に入るとまず、ゴッホのオランダ時代。

ミレーに強く影響を受けていた頃の作品が並びます。

特に「ジャガイモを植える農民」は、どこかミレーの《落穂拾い》を思わせる構図と雰囲気。

暗い土色、重たい空気。

でもその中に、小さな灯りのような“人間の誠実さ”が描かれているように感じました。

闇のなかに存在する光こそに美がある

暗い部屋で椅子に腰掛ける女性。小さな窓から入ってくる柔らかな光に照らされている。全体的にとても暗い絵ですが、眺めていると、とても優しい気持ちになれます。

ゴッホはデッサンも素晴らしくとても細かくて、

「やっぱりベースがめちゃ上手い人なんだな…」と感じました。

そして、農民の顔や手の描き込みがとにかく強い。

数学的に正確な頭部ではなく、大まかな頭部…例えば掘る人が顔を上げて風を嗅ぐときの表情、話しているときの表情…つまりは命だ

と語るように、ゴッホは自然な表情を描こうとしていたようです。

《籠を持つ種まく人》のデッサンは、絵を見てもチャット違和感の残る作品で、なんだか急に幼稚に見えるような作品でした。その作品の横のパネルではゴッホの言葉がこのように添えられていました。

種を蒔く人ではなく、種を蒔くポーズをとっている人と言うが、全くその通り。
あと、1.2年もすれば種をまく人が描けるようになるだろう。
大変なのはポーズを取るということがどういうことなのかをわかってもらうこと。デッサン画家の小さな悩みだ。

なるほど。ポーズをとった農家のモデルさんのポーズがぎこちなかったのか…

僕は見たまましか描けないというゴッホが見たまま描いた結果、なんだかぎこちなさの残る作品に仕上がったということのようです。私はなんだかおかしくて笑ってしまいました。

《ジャガイモを食べる人々》では、

手の労働文明的な生き方とは全く異なる生活があることを伝えたい
彼らがいかに誠実に稼いだか

「彼らの誠実に稼いだ食事を描きたかった」という気持ちがストレートに伝わってきて胸が熱くなりました。


2章:パリでの出会いが生み出した “光と色彩”

続く第二章は、ゴッホがパリに到着してからの急激な転換期。

シニャックやスーラの点描法、モネやルノワールの明るい色彩を吸収して、

絵が突然パッと明るくなるんです。「変化」が一目でわかる構成になっていました。

ゴッホの作品だけでなく、印象派画家の作品も楽しめ、見応えたっぷりでした。

印象派について語ってくれたが、僕が考えたものとは少し違う。印象派のグループではないものの、素晴らしいと思うものはドガの裸婦やモネの風景とかである。

とゴッホは語っています。印象派と少し距離があるようなセリフですが、とても影響を受けたことは一目瞭然でした。

印象的だったのは《石膏像のある静物》。

しっかり形を捉えながらも、鮮やかに色を置いていくリズムがあって、どんどん自分のスタイルを掴み始めているのが伝わりました。

ゴッホのタッチは、どこか爽やかな風のようなものを感じます。

見ているだけで、なんだか落ち着く。そして、彼の描く絵から風を感じて心が洗われる。


夜のカフェテラス

目玉はなんと言っても 《夜のカフェテラス》

南フランスの強い陽光が、ゴッホの色彩を一気に解放した時期です。

この作品に添えられた言葉は

妹よ僕は今、豊かで素晴らしい自然の表情を描かねばならないと思っている。
僕らに必要なのは陽気さと幸福と希望と愛だ。

日本では約20年ぶりの公開だそうです。

実際に目の前に立つと…

イエローは思っていたより“渋い”

やっぱり経年で黄色は茶色っぽく落ち着いた色に変化していました。

それでも、カフェの灯りの部分だけは、筆跡が残るほど厚く塗られていて、

「この灯りだけはどうしても輝かせたかったんだろうな」と感じます。

星空の青は“一色ではない”

濃い青の中に、細かな星の集まりの明るさがあって、

夜空のムラまでもがリアルに表現されていました。

ただの青じゃない。

そして天文学者がこの絵の星の位置を調べると、1888年9月9日から2週間の間に描かれたことがわかるそうです。

ゴッホはやはり、見たままの色をキャンバスに乗せて描いたんですね。

展示室にいると「本物の星空を見ているみたい」そんな不思議な気持ちになりました。

3章:アルルでついに“色彩の爆発”へ

第三章は、ついに来た! アルル時代。

淡いオレンジ色の夕陽が地面を青っぽく見せている。輝かしい黄金の太陽。

太陽を描く事にとてもこだわりを持っていたゴッホ。
あの直視できないほどのエネルギーの塊をキャンバスに表現しようとした。

《夕暮時の刈り込まれた柳》の太陽は生命力そのもの。見ているだけで熱を感じるような黄金の太陽。

アルルという土地がゴッホに与えた影響の大きさがよくわかります。

彼の喜びが絵画から伝わってきます。


まとめ:ゴッホは「光に向かって歩く人」だった

今回のゴッホ展は、

暗いオランダ時代 → パリで光を知る → アルルで色彩が爆発

という、前半生の大きな流れを体験できる展示でした。

どの章にも「影」と「光」があり、

オランダ時代から感じられた“弱い立場の人に寄り添うまなざし”は、ゴッホの根っこにずっと流れているものだと思います。

モデル代が足りず、ほんとうなら人物画に没頭したかったところですが、ただ花を描いて一連の色彩研究の習作をやってます。

ちょっと拗ねた子供のようなこの言葉も可愛らしい。
そしてこの言葉に私はワクワクしました。

叶うことはないけれど、私がモデルになったら、彼は私のどんな表情を描いてくれるのでしょうか…

なんて想像したりして、そんな余韻に浸っています。

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